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西の都には、笑顔をなくした少女がいた。 生まれてから、一度も笑ったことがないという。 両親はひどく心配しながら、この子には感情というものがないのではと恐れてもいた。 両親でさえそうなのだから、他の人は言うまでもない。 少女には両親がいる。同い年の友達もいる。部屋にはぬいぐるみがいっぱいだ。 でも、少女はひとりだった。 少女は、じっと部屋に閉じこもっていた。外に出ても、楽しいことなんてない。 部屋の隅に蹲って、物言わぬぬいぐるみたちと遊んでいるほうがずっと楽しかった。 ぬいぐるみは張り付いた笑顔を浮かべたままで、笑顔をもたない少女を蔑んだりしない。 この日も、少女はぬいぐるみを相手に遊んでいた。 窓を叩く音がする。 近所の友達かしら、と思う。 友達は誘いに来る時、玄関のノッカーではなく、少女の部屋の窓を叩くのだ。 今日は遊びたくない。断ろうと思って、窓に近づいた。 窓辺に立って、驚いた。 少女の部屋を訪ねたのは、友達ではなかった。 旅の疲れでくたびれた、元は鮮やかだっただろう服を纏った、同い年くらいの道化師の少年。 おいで、と少年が手招きする。 袖から色褪せた玉を取り出して、くるくると回して見せる。 一緒に遊ぼうと誘っているようだった。 きっと、少年が他の子みたいに笑っていたら部屋から出なかった。 きっと、少年が他の子みたいに喋っていたら遊ぼうと思わなかった。 少女は、自分と同じ雰囲気の、無口な少年の道化師に誘われて、初めて自分から窓を越えて外に飛び出した。 |