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どうしてこんなことになったのか、わからない。 そもそも僕にわかることって何だろう。 わかるのは、身体の痛みと、抑えようもない、虚しさ、哀しみ。 人々が僕を殴る。蹴る。 僕は痛くて、辛くて、悲しくて、怖いけれど。 僕を殴っている人たちは笑っている。楽しそうに、愉快そうに。 僕が言葉にならない呻き声を上げると、更に人々は哄笑した。 僕が滑稽に這いつくばると、一層笑い声は大きくなる。 何だ、人はこんなことで笑ってくれるんだ。 僕が、痛いことも辛いことも悲しいことも怖いことも全部我慢すれば、僕は笑ってもらえるんだ。 ああ、これで死んでしまうとしても、僕は最後まで道化師として生きてきたことになるのかな。 これが最初で最後の笑いだけど、いいのかな。 もう、感覚がよくわからない。 ――やめろよ。 突然、人の声がはっきり聞こえたかと思うと、暴力もまたぴたりと止んだ。 ――こんなチビ苛めて何が面白いんだ。 その人の言葉は、残酷に響いた。 僕は、こんなにまでしても、面白くないのか。 ――お前も、抵抗くらいしろ。 いいんです放っておいてください僕は笑われるのが仕事なんですこうでもしないと誰も笑ってくれやしないんです…… 僕に言葉があれば、そんな言葉がきっと溢れ出していた。 でも、僕にはない。 いつの間にか、僕を殴って笑っていた人たちは何処かへ行ってしまっていた。 ――お前……顔を、上げろ。 言われるまま、顔を上げる。 散々殴られて、きっとこの上なく見っとも無くなった顔を。 ――どうして目を逸らす。こっちを見ろ。 言われても、僕なんかには正視できない。 この人は、僕と違う。つよい、人だ。 ――……お前は、殴られていた方がよかったか。 静かに問われて、何故か胸の奥が疼いた。 ――得られるものは、笑いであれば何でもよかったのか。 何でも…… ――しかし、あいつらはお前でなくても笑っただろう。殴れさえしたら。 そんなこと、とっくにわかっている。 ――お前に、道化師としての誇りはないのか。 誇り……自分が何であるかさえわからずに信じられない僕に、そんなものがあるのか。 あるわけがない。 なのに。 何だろう、この、溢れ出てくる涙は。堪えられないほどの、胸の痛みは。 ――お前が道化師として在りたいなら、西へ行け。 ――其処に、お前を必要としている娘がいる。 ――行って、己が道化師であるという証を自らの手で手に入れてこい。 その言葉を受けた途端、信じられないほどの力が身体の心から沸き起こってきた。 僕はすっくと立ち、今までにない力強さで大地を踏みしめる。 西へ。 ただ、それだけが僕の頭の中にある。 僕が、此処にいる理由を探しに。 生きる目的も力も失っていた僕を奮い立たせてくれたその人に、礼を言おうと振り返った。 其処に、彼の姿はなかった。 |