道化師



笑えない道化師



何処の街に行っても、僕は役立たずの道化師だった。

僕は、玉を使った芸しかできない。
僕は、語る言葉を持たない。
僕は、表情を持たない。

それで一体、僕は何を人々に語れるだろう。表現できるだろう。
何一つ雄弁に語れない道化師が、一体どうやって人々の笑いを誘うのだろう。

僕の中に、ただ一つ、確かなものがある。
それは、僕が道化師であるということ。
あの人も、僕が道化師となるために生まれてきたと言っていた。だから、僕は道化師だ。
それ以外の何者でもない。それ以外の何者であってもならない。
でも、笑えない道化師が、いる理由って何だろう。
いても面白くとも何ともない道化師なんて、いる価値があるのだろうか。
その前に、道化師は人を笑わせる芸を持った職人のことのはずだ。
じゃあ、僕は一体何なのだろう。

怖い。

自分がわからない。
あの人は、僕が立派な道化師になると言ってくれた。
でも、それを信じてもいいのだろうか。
僕は、あの人の期待に応えられないまま世界の片隅で朽ち果てていくのではないだろうか。

怖い。

どうしたら人は笑ってくれるのだろう。
どんな時に人は笑ってくれるのだろう。

僕は、どうしたら。

怯えと迷いを抱えたまま、僕は街を転々とした。
色んな人がいて、だけど、誰ひとり僕を見なかった。
怯えと迷いはどんどん膨らんで、僕は何もわからなくなった。

何日も彷徨い歩くうち、いつの間にか荒廃した街に入っていた。
崩れ落ちた建物。砂塵が風に吹き上げられて容赦なく僕を叩いた。

其処に住む、虚ろな目の人々。
目が、合った。
厭な予感が、した。




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