道化師



寂れた街角で



道化師として生まれた場所を巣立った僕は、薄暗い、淋しい街に立っていた。
道行く人は皆、下を向いていて、疲れきった足取りで去っていく。
高い建物、それに囲まれた道は狭く、路地のよう。壁は古い煉瓦で、所々崩れている。
日が差し込まぬ此処で、人々は表情を忘れ去っていた。

僕はくるりと回って玉を取り出す。
赤、青、黄、緑の色とりどりの玉。
無彩色の街並みに、それらはぽっかりと鮮やかに浮かび上がる。
僕は、それを次々に投げては受け取り、四つの玉は僕の両手の上で円を描く。
不自然なくらい、浮かび上がる四つの玉。
けれど、人々は僕にひとつも目をくれない。
懸命に芸をする僕の前を、人々はただ疲れたように歩き去るだけで、僕の芸は彼らの目に入らない。

どうしてだろう。

僕は、芸をする手を止めた。
受け取り損なった玉が、ころころと足元を転がっていく。


――辛気臭い道化師だこと。


人の声に、はっと頭上を仰ぎ見る。
二階の窓から女の人が僕を覗いていた。けれど、僕が見た途端、彼女は乱暴に窓を閉めた。

辛気臭い。

僕は自分のほっぺたを抓った。
てくてくと歩いて、水溜りを覗き込んでみた。
其処には。
何の表情もない、僕が居た。
街の人より、無表情な、作り物のような、僕が。
笑ってみようとした。
とても不細工な、崩れた顔にしか見えなかった。

ぱしゃりと、水溜りを踏み荒らした。




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